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今回はプログラムに関することではなく、文章の作法を解説する記事となります。

一応、大学は文学部・日本文学科を卒業しているわたくし。文章を書くのは中学からの趣味でして、実は大学生時代は、とあるゲーム会社でシナリオライターの仕事をしていました。

社会人になってからも、前職の会社と現職で、全てではありませんが一部シナリオの執筆・監修の仕事をしています。弊社からリリースされたストーリー性の高いゲーム3作品(『幕末ドクター』『秘密のキスは王室で』『白衣のオレ様』)を開発する際は、プログラムを作る傍らシナリオにも深く関わらせていただきました。その経験を踏まえて、この解説は、「どうすれば良い文章が書けるのか」とか「どういうシナリオを書けば人を感動させられるのか」などではなく、むしろ「こう書いた方が読みやすい」や「やってはいけないこと」など、テクニック的な面をメインに紹介します。

 

シナリオお作法【基本中の基本】

 

・セリフの結びに句点をつけない

例)

× 「認めたくないものだな。自分自身の、若さゆえの過ちというものを。」

○ 「認めたくないものだな。自分自身の、若さゆえの過ちというものを」

文章を結びは「。」(句点)を書くのが決まりです。しかし、セリフの場合は必要ありません。1クリック内に2文以上のセリフがある場合は、1文目のみ句点をつけます。

みなさんは、小学校のときに作文を書いたことをおぼえていますか? そのときに、「原稿用紙の使い方」を教わったと思います。文部科学省の指導要領では、上記の作法とは違い、会話文の場合でも必ず句点を書くよう教えることが定められています。正式な文章の書き方としては句点を入れるべきなのでしょうが、ゲームシナリオの場合は必要ない、というのが主流の考え方のようです。

今現在はほとんどの作品でこのルールが適用されていますが、最近発売されたゲームでも、作品によっては句点が入っている場合があります。ときメモ4とか、珍しく全部入っていましたね。

 

・感嘆符や疑問符などの記号のあとにもセリフを続ける場合は全角スペースを開ける

例)

× 「ええい!連邦軍のモビルスーツはバケモノか!」

○ 「ええい! 連邦軍のモビルスーツはバケモノか!」

これは、1回の中に2文以上セリフがあり、1文目に感嘆符や疑問符が付く場合のルールです。例の通り、2文目を始める前にスペースが空いています。

忘れられがちなルールなのですが、このスペースがあるかないかで可読性にかなりの差がつきます。そして、このルールを知ってしまうと、スペースが空いていない文章を見るとすごくムズムズして気持ち悪くなります。この感覚は、たぶん文章を書けば書くほど実感が強くなると思います。

 

・沈黙の表現には、必ず三点リーダを2つセットで使用すること

例)

× 「こんな嬉しいことはない・・・」

× 「こんな嬉しいことはない…」

× 「こんな嬉しいことはない・・・・・」

× 「こんな嬉しいことはない‥‥」

○ 「こんな嬉しいことはない……」

「てん」とか「さんてん」とキーボードで打って変換してみてください。3つの点がセットになった記号が出てくると思います。それが「三点リーダ」です。シナリオを書く際には、これを2個セットで使用する、というのが決められています。

間を表現したいがために、2個だけじゃ足りないという場合もあると思います。そのときも、原則的には4個、6個、という風に2個の倍数ずつ増やしていくようです。

ちなみに自分は、「て」を変換すれば「……」が出てくるように、単語登録をしています。便利ですよ。

 

以上の3つの決まりが、基本中の基本の作法です。これが守られていないシナリオを見ると、「……フン、このトーシロが」という気分になります。文章作法に自覚的になるだけで、表現能力は飛躍的にアップします。まずはこういったルールに気を付けることから始めていきましょう。

 

シナリオお作法【ちょっと応用】

ここからは応用というかレアケースで、人によって対処の仕方が違うという作法を紹介します。

・セリフ中にさらにカッコを使いたい場合、別の記号で代用する

例)

× 「人間だけが神を持つ。今を超える力、「可能性」という名の内なる神を」

○ 「人間だけが神を持つ。今を超える力、『可能性』という名の内なる神を」

これはセリフ内で、他のセリフの引用や単語の強調をする際に、さらにカッコを入れ込む場合のルールです。例では『』(=二重括弧)を使用していますが、他にも””(=ダブルクォーテーション)、<>(=山括弧)、[](=大括弧)などがよく使用されます。

強く誓ったポリシーなどがない限り、二重括弧を使えば問題ないとは思うのですが、「二重括弧は固有名詞にしか使わない」という主義の方も中にはいます。ただ、やはりこれといった共通見解はないので、自分なりのルールを設定してください。

 

・人称管理を厳密に行う

例)

× 「私がイセリナのために焦っているだと!? 馬鹿な! 俺は冷静だ!」

○ 「私がイセリナのために焦っているだと!? 馬鹿な! 私は冷静だ!」

この例の場合は極端ですが、長編のシナリオを書く場合に破ってしまいがちなのがこのルールです。自分のことを「僕」と呼んでいた人物が、いつの間にか「俺」になっている。もちろん、ストーリー上の演出であったり、納得のいく理由が明示されているのであればなんら問題ありません。しかし、単なるミスはキャラクターのブレを生じさせる原因になるので気をつけましょう。

最初のキャラクター設定を練る段階で、人称一覧を先に決めて表にしておくのがいいかもしれません。

 

 

以上、シナリオを書くときに注意すべき作法でした。

他にも可読性の観点から気を付けるべきテクニックはたくさんあります。が、ここに全てを書いていたらキリがないので、あとは自分が執筆する際に身に付けていってください。

初めまして。谷口です。これからよろしくお願いします。

前職でケータイゲームのプランナーを担当することがありましたので、今回は企画に関する記事にしようと思います。題して、『釣り★スタ』のスゴさです。

■なぜ『釣り★スタ』か

『釣り★スタ』とは、GREEにて現在公開されている、釣りをテーマにしたソーシャルゲームです。CMやネット広告での露出がかなり高いので、ほとんどの方はご存知だと思います。かく言う私もCMを見て興味を持ったクチで、実際にGREEに登録したきっかけもこのゲームでした。商品として短命だと言われるソーシャルゲーム業界において、なぜ『釣り★スタ』はリリースから3年経った今でも遊ばれているのか。そういった疑問を持つ方々にとって、この記事がすこしでも手助けになれればと思います。

■そもそもソーシャルゲームって?

ケータイにおけるゲーム開発でやっかいなのが、パッケージゲームでは付いていて当たり前のものが存在しない(あるいは極端にスケールダウンしている)、なんてことが起こりうることです。軽く列挙すると、

  • 説明書がない
  • 画面が小さい
  • 専用コントローラーがない
  • マナーモードでプレイしていると音がない
  • 多種多様な端末があるため、厳密な動作環境の仕様がない

これだけの悪条件が揃っていて、先人たちはよくゲームを作ろうと思ったな、と。しかもよくここまで巨大産業に育て上げたな、と畏敬の念を禁じえません。

とは言え、ダウンロード型のアプリならまだマシです。ソーシャルゲームの場合、さらに以下の条件が付け加えられます。

  • 完全に無音
  • 「ボタンを押す」という1アクション毎に通信待ちの待機時間がある
  • 「ゲームクリア」という概念がない

ここまで来ると、本当にゲームなのかすら疑わしいです。ですが、多くの人がそれをゲームとして受け入れていますし、今や巨大な産業にまで成長しています。

誰かが呟いていました。

ソーシャルゲームが流行るまで、平気で企画を落としたり、予算をダンピングする時に「ゲーム性が低い」という言葉を理由に使ってきた人達が、今や一切その言葉を使えなくなったというのが実にユカイかと思ってます。

そう、ソーシャルゲームにおいては今までのゲームとは全く違った考え方が必要なのです。その考え方を実現してヒットしたのが、『釣り★スタ』なのだと思っています。

■システムのスゴさ

よく、「ゲームの企画とはルールとゴールを定めるものだ」と言われます。『釣り★スタ』の場合、そのゲーム上でのルールとゴールが誰にでも楽しめるようにうまくデフォルメされているのです。

『釣り★スタ』公式ページには、ゲームの説明としてこう書かれています。

  1. 釣り場を選ぼう!
  2. 釣りをしよう!
  3. お魚をGET!

以上、たった3点だけです。ぶっちゃけこの説明を読まなくても、『釣り★スタ』はなんとなくプレイすることができます。

その「なんとなくプレイできること」こそ重要なのです。これまでゲームをやってきたことがない人にもとっつきやすい親切設計。「とりあえず話題になっているから、やってみようかな」とアクセスしてきた人が、試しにやってみて楽しめる。そこを重点に作られているように思います。『釣り★スタ』にとって、ケータイゲームの欠点であったはずの「説明書がない」ことは重要ではないのです。それを裏付けるように、『釣り★スタ』の新規ユーザー登録は今でも絶えません。新規ユーザーの流入は、そのままゲームの寿命を延ばす役割を果たしています。

現実世界における釣りの面白さのエッセンスをうまく抽出し、ゲームシステムに反映させる。それが、『釣り★スタ』のゲームシステムのスゴさです。

■ゲーム部分のスゴさ

さて、ここからがいよいよゲーム部分の分析です。

単純に、『釣り★スタ』はゲームが面白いです。継続してプレイしている人の大半の理由は、このゲームに、ゲームとしての根源的な面白さを感じているからではないでしょうか。では、HD画質のゲームが当たり前の時代において、画面は小さい、画質も悪い、音もないようなFLASHゲームを、なぜ人は面白いと感じるのかを考えていきたいと思います。(今回は、多くの初心者が行うであろう「川釣り」をメインに解説します)

私は、大きく分けて3つの要因があると考えています。

  • 緩急のバランス

『釣り★スタ』のゲームパートは、「ウキを投げて魚が食いつくのを待つ」パートと、「食いついた魚を釣り上げる」パートに分かれています。これを、それぞれAパートとBパートとします。

「ウキを投げて魚が食いつくのを待つ」Aパートは、アクションゲームとしてはゆったりした流れです。制限時間もありませんし、何かのテクニックを強要されることもありません。ウキを投げる方向と強さを決めたら、あとは魚が食いつくのを待つだけです。唯一Aパートでテクニックを発揮するとしたら、魚が食いついた瞬間に決定キーを押下することでしょうか。それを合図にゲームは進行し、Bパートへと移ります。

Bパートでは、Aパートと打って変わって非常に動きの激しいアクションゲームらしい画面になります。魚が画面の中心点に来たタイミングを見計らって、決定キーを押します。もちろん、それ以外の場所でキーを押すと魚に逃げられてしまいます。大きい魚やレアな魚だと動きが抵抗が激しく、難易度も上がります。このBパートは、目標が画面の中央にきたらボタンを押す、というFPSゲームと同じ面白さを持っています。

このAパートとBパートの緊張と弛緩のリズムがとてもバランス良く配置されて、相乗効果を発揮しています。ゲーム中、プレイヤーが実際に押すのは決定キーのみです。ボタンひとつでこの絶妙なバランスを実現するのは、ゲーム開発者にとって非常に難しいことだと思います。

  • 振動(バイブレーション)機能の活用

この、「振動(バイブレーション)機能」はソーシャルゲームを語る上で欠かせない重要な要素です。(いずれこの事のみで記事を詳しく書きたいなあ)

BGMやSEがないソーシャルゲームにとって、振動機能は多くの役割を果たします。ゲーム中、ケータイが振動するのは、ウキに魚が触れたり食いついた瞬間です。これは、「実際の釣りでの魚が食いつく感触の再現」であり、「(動きの激しいBパートの始まりを告げる)ホイッスルの合図」であり、「プレイヤーの目を覚まさせる興奮剤」であります。

「ケータイを手に持つ」という感覚と、「釣り竿を持つ」という感覚をリンクさせるキーワードとして、振動機能は欠かせません。BGMもSEも無い環境で、視覚と触覚だけが頼りになるゲームシステムが、逆に『釣り★スタ』の醍醐味として持ち味になっているのです。

  • 間(ま)の利用

「間」、というのはゲーム開発者たちがみな頭を悩ませる問題だと思います。何フレームで画面を遷移させるか、どのタイミングで演出を入れるか、何秒をタイムリミットとするか、など、多くの「間」をトライアルアンドエラー的に繰り返し試しているはずです。

ソーシャルゲームにとって、「間」というのは情報を取得する「通信時間」という大きな問題として常に念頭に置くべき要素ですが、『釣り★スタ』はこの「間」の利用が非常に上手い。

プレイヤーは、魚を釣るために遊んでいる間、その魚が何なのかを知りません。シルエットで大きい魚か小さい魚か、くらいの情報しか与えられないのです。そして、釣りに成功して、「GET!」と表示されてから通信時間に入ります。この通信時間の間、プレイヤーは「どんな魚が釣れているんだろう!」と期待しているに違いありません。オノマトペで言うと「ワクワクドキドキ!」といったところでしょうか。多くのソーシャルゲームが、「通信時間」をただの「待機時間」のままにしているのに対して、『釣り★スタ』においてはそれをプレイヤーの欲求や期待を増幅させる装置として活用しているのです。

ここでも、通信時間というソーシャルゲームの弱点を『釣り★スタ』はうまくプラスの要素に転化しているのです。

■まとめ

以上のように、『釣り★スタ』はソーシャルゲームの弱点と思われる部分を、「釣り」という独特のシステムに取り入れて昇華させているのです。だから、ゲームとして面白い。だから、誰でも楽しんでもらえる。もちろん、無料である(ノーリスクである)ということと、大量の広告が流された、という点も絡んできますが、それ以外にもヒットする要因は確実にあると思っています。

さて、非常に長い記事となってしまいましたが、ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございました。

次回は「ソーシャル性」に富んだヒットゲームの記事を書きたいと思います。もしよろしければ、次回もお付き合いください。